秘密の地図を描こう
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ラウ達とともにニコルがやってきた。
「ずいぶんと大荷物だね」
それだけではない。かなりの物資を運んできた。
「半分は、隊長の機体の追加パーツです」
ストライクのストライカーシステムと似たようなものを開発したのだとか。
「ドラクーンシステムがメインですけど」
にっこりと微笑みながら彼はそう続けた。
「後は、僕の機体ですね」
外装が間に合わなかったので、パーツ数が多くなってしまったのだ。彼は苦笑とともにそう言う。
「あぁ、それは聞いている。家の連中で何とかするさ」
ニコルにもつきあってもらわないといけないだろうが、とマードックが口を挟んでくる。
「でも、キラはだめですからね?」
当然のようにニコルはそう言ってきた。
「何で?」
「キラには他に優先しなければいけないことがあるでしょう? こちらは僕たちだけで十分です」
キラは自分がやるべきことをやってくれ。彼はそう続けた。
「僕がやるべきこと?」
何があるのだろうか。キラはそう考える。
「一応、ウィルスは完成したよ?」
それ以外、今は考えつかない。言外にそう付け加えた。
「なら、体調を整えてください」
キラにとって一番重要な仕事はそれだ、とニコルが言ってくる。
「それはそうだな」
マードックもそれにはうなずいて見せた。
「それに」
にやりと笑いながら彼は続ける。
「お嬢ちゃん達の相手をしてもらわないとな」
自分達では無理だ、と視線を移動させた。
「確かにそうですね」
ラクスとミーアだけではなくカガリ達もいるから、とニコルがうなずく。
「……別に僕じゃなくても……」
ニコルでもいいではないか、と彼を見つめる。
「だって、皆さんのご指名はキラですよ?」
自分ではない、とニコルは言い返してきた。
「相手がアスランなら代わりをしてもいいと思いますが、女性陣は……ねぇ」
「そうそう。怒らせると怖いからな」
二人はそう言ってうなずき合っている。
「あら。別に怖いことなんてありませんわよ?」
だが、そんな彼らの動きがこの一言で凍り付く。
「そうですよ。常識のない人にはわかりませんけど」
さらに続けられた声は先の声とそっくりだ。だが、キラには別人のものだとわかる。
「……お嬢ちゃん達……お願いだから、驚かせないでくれ」
声の区別も付かないから怖い、とマードックが苦笑とともに告げる。
「あら。そうですか?」
そう言って首をかしげたのはミーアだ。
「マードックさんをいじめないでくれないかな、ミーアさん」
彼に落ち込まれるといろいろと困る。キラは静かにそう告げた。
「わかりました。気をつけますね」
素の口調になれば、さすがに区別が付くらしい。
「なるほど……そうしてくれるとラクス嬢ちゃんと区別が付くな」
よかった、よかった……とマードックは言う。
「さすがはマードックさんですわね」
ラクスもそう言って微笑む。
「では、キラ。他の方々もわたくし達を見分けられるかどうか、確かめてみようと思いますの。つきあっていただけます?」
「ラクス様はほぼ皆さんが区別つけられるって。本当かどうか、確かめないと」
そう言いながら彼女たちは両側からそれぞれキラの腕に自分のそれを絡める。
「行きましょう」
そのまま、二人がかりでキラを引きずって歩き出した。
「ちょっと、あのね!」
慌ててそう問いかける。
「行ってらっしゃい、キラ」
「がんばって来いよ」
だが、ニコルとマードックが彼女たちを応援していてはどうしようもない。
「楽しみですね」
ふふふと笑うラクスと、それに同意をするミーアに引きずられて、そのままMSデッキを後にする羽目になった。